鰍が大好き

私の生家の前に流れているのは利根川です。当時の釣りガイドには家の前の利根川が「良い釣り場」としてよく出てきます。上流部ですから岩魚、ヤマメ、鰍(かじか)、ウグイなどが生息しています。

父は川魚が大好きでした。家は利根川に沿って建っていましたので釣りをするには好都合です。魚は好きでしたが、釣りにはとんと疎く、もっぱら夏に川遊びのついでに子供たちがとってきた川魚をとても楽しみにしていました。なかでも、鰍が大好きで、子供たちがとってきた鰍を七輪でじっくりと焼いて、酒のつまみにするのが、父の楽しみでした。

父の大好きな鰍が大量にとれる時があります。大雨が降ったり、ダムが放流したりした後です。増水した川の水が引いてくると鰍はそれに対応できず取り残されてしまうのです。水の引いた川原を丹念に歩き鰍を拾って歩く。効率のいい魚とりです。たくさんの鰍を持って帰ると、父は満面の笑みです。自分で焼いて食べるのですが、鰍は意外と肉が少なく骨がかたいため、しゃぶるような食べ方になります。そんな姿を見て、弟が父に向ってつぶやくのです。「おめーは、ねこか・・・」そんな声も気にせず無心に食べる父の姿は、微笑ましくもあり、懐かしい思い出です。

知らない人のために・・・鰍(かじか)はこんな魚です