栄泉堂

父は高崎市のはずれの町で生まれています。父の父、私の祖父は藤岡市平井の生まれで、高崎で和菓子屋を開業します。当時としては珍しい三輪車を使い、卸売りと店での小売りを営んでいました。商売には結構才覚があったようで、職人も何人か使い大きな商売をやっていたようです。開業の時代は今から100年以上前、今はやりの「鬼滅の刃」と同じ大正時代になります。屋号は「栄泉堂」です。

祖父のことはほとんど覚えていません。私が3歳のときには病に倒れ、長い入院生活を送っていたようで、父と一緒に高崎の鉄道病院に見舞いに行った記憶ぐらいしかありません。

そんな祖父が開業した和菓子屋ですが、父の兄が継ぐこととなります。叔父は顔がブルドックにそっくりで、低音の話声はとても迫力があり、怖くて苦手な叔父でした。叔父は新しくパンの製造にも乗り出していて、食パンやアンパンなどを作っていました。その後給食のパンに特化しますが、叔父がなくなる頃には、廃業を余儀なくされます。給食のパンの需要がなくなったためです。

私は社会人となってから、いろいろな経験を経て現在のバームクーヘンの仕事についています。若い頃には自分が祖父と同じ菓子屋になるとは夢にも思いませんでした。楽な日々ではありませんが、社員が頑張ってくれるので何とか事業を営んでいます。

私がいつも従業員に言っていることがあります。「おいしいものを提供しよう。お客さんにおいしいと言ってもらえるものを売ろう」偉そうなことは言えませんが、菓子屋はお客さんに「まずい」と思われたら終わり・・・そう思ってます。当店のバームクーヘンは本当にいい材料を使っています。特にバター、生クリームにはこだわりがあり、国産の良いものを使用しています。

このごろ本当にうれしい言葉をいただくことが増えました。「もらっておいしかったから、自分で買いに来た」「人にあげると本当に喜ばれる」ありがたいことです。ですから、さらに美味しいものを安く提供したい。そう思うのです。祖父は裸一貫で菓子屋をおこしました。時代の波に乗り美味しいものを売っていたと思うのです。当店は次の世代、だれが経営者なのかわかりませんが、いみじくも祖父と同じ菓子屋を営む者として、美味しい菓子を売り続けたい、そう思わずにはいられません。

祖父は今の私を見て、何というだろうか・・・そう考えながら、「ありがとうございました」と言ってバームクーヘンをお客様に渡す毎日です。

雰囲気が良く似ています。