父の陰謀その2

この物語は、その1からお読みください。

さて、父はまんまと自分の野望を果たします。そして私はいやいや父と修学旅行に行く羽目になります。わたしは我慢するしかありませんでした。その時は父がなぜPTA会長になりたかったのかよくわかりませんでしたが、半年後、その真の目的を知ることになります。父は学歴の無いのがコンプレックスだったのか、「俺は大物になる」酔うとよく言っていました。「また言ってらぁ」と本気にせず聞き流すのが常でしたが、その日の「俺は大物になる」は聞き流せませんでした。いきなり「次の町会議員の選挙に出る」と言い出したのです。前にも書きましたが、国鉄職員がたくさんいましたので、その票をまとめれば確実に当選できます。現に、町会議員には2人ほど国鉄職員から出ていました。今は在職中に公の仕事を兼務するなど到底できませんが、当時は労働組合運動の一部として、許されていたようです。そんな背景がありますので、当選を前提での出馬宣言ですが、母の猛反対にあいます。猛反対にあいますが父も引き下がりません。なにがなんでも母を説き伏せたいようです。二人の会話は、そのうち夫婦げんかに発展します。そして子供たちはわれ関せずと逃げ出します。隣部屋から二人の声を聞いていると、父が「国鉄票だけでなく、女性票もとりまとめてある。出馬しなければ顔が立たない」そんな事を言い出します。前後のやり取りからどうやら中学校のPTAの役員のことのようです。そこで初めて父がPTA会長になった目的を知ることになります。何のことはありません、PTA会長の椅子は、その票を取りまとめるためのようです。確かに今考えても、父は十分な組織票を手にしているようです。後は母の賛成だけ。しかしこれが一番の難題なのは家族全員認知しているところで、母の常にネガティヴな発想を打ち破ることは並大抵ではありません。案の定、母は奥の手を出します。「出るんなら、別れてくれ」これには父も絶句しかありません。その日の喧嘩は父の負けです。

そのあと、二人がどんな話をしたかはわかりませんが、結局町会議員選挙には出ませんでした。母を説得できなかったようで父の願いはかないませんでした。PTA会長になり、一つ一つ既成事実を積み上げ、町会議員になるという父の野望は、結局母の一言で打ち砕かれたようです。

今になって、あのとき、父にもっと加担してあげればよかったと思います。子供なりに馬鹿にしてましたが、父を大物にしてあげればよかった、父の夢をかなえてあげればよかった、そう思うのです。父が他界して十年を超える時が流れました。社交的で明るく、いろんな人の世話をした父でした。あの世の世界では「あのよの国会議員」をしているかもしれません。

言わずと知れた国会議事堂 父の夢の舞台かも