エブリータイム坂道発進
前回は父の運転免許について書きました。今回は私が通った自動車教習所について書いてみます。私が教習所に通い始めたのは二十歳を前にした夏休みでした。実家から近いのは3つ先の駅にある教習所でしたが、大変評判が悪くお金もかかるようなことでしたので、叔母の家が渋川で自動車の修理工場をやっていたこともあり、叔母の計らい、紹介で渋川の教習所に通うことになります。なるべく規定時間で終了させるという密約もあったようで、夏休み中に免許は取得できました。この教習所は渋川駅からバイパスを抜けた山の頂上にあります。くねくねと曲がりくねった狭い林道を抜けた先に、忽然と現れる施設です。山の斜面を切り開いて造成したようで、全体的に斜めになっていて平らな部分はありません。もちろん直線的なコースもあるのですが、平らなのは路面だけで左手は土手、右手は崖下といった風情です。自動車教習には、何段階目か忘れましたが、坂道発進の教習があります。ですが、ここに至るまでに大概の教習生は、坂道発進ができるようになっています。というのも一旦停車すると、たいていの場所は坂道で、ブレーキを踏んでいなければ下がってしまいます。ですから、自然とブレーキのかけ方、クラッチの切り方、半クラッチ状態確認など、覚えてしまうのです。話は前後しますが、今と違って、運転免許には「オートマ限定」なるもの存在せず、だれもがパーキングブレーキ、半クラッチを使用した坂道発進の洗礼を受けています。ここが一つの難関、通過点だったのです。
さて、無事に教習も進んで仮免許を取得し、路上教習に出るのですが、場所が場所だけに、仮免許を取得したばかりの教習生が、急な林道を駆け降りるのは大変危険です。そこで下の道まで教官が運転をして、そこから教習生が運転に入るのです。たぶん、日本広しといえ、こんな教習所はここだけだと思います。
さて、この教習所、現在はどうなっているか調べてみましたが、皆目わかりませんでした。地図にも載っていませんし、ネットで調べても手掛かりなしです。実は、10年ほど前に廃墟マニアの投稿で出てきたことがあり、そのときすでに廃墟となっていましたので、いまは山に戻っているかも知れません。
時期は覚えていませんが、一度妻とドライブの途中に立ち寄ったことがあります。記憶にあった林道は、さらに狭く急に感じられ、「よくこんなとこに教習所があったな」と改めて感じ入りました。
「こんなところで、よく運転できたね」 あれはてた教習所のコースをみての妻の一言、深く共感致しました。
その後、私が山道を運転するのが好きだったのは、教習所の影響かもしれません。
こんなイメージです