一枚の写真があります。高校生の頃の写真で私のほか、友人二人、3人で撮った写真です。場所はつり橋の上、みんな学生服でにこにこ笑っています。たぶん高校3年生の秋のころのようです。背景の山がうっすら色づいています。この時分はみんなで後閑駅に降りて60メートルほどにある「夢」という喫茶店を頻繁に訪れていました。もう何十年も前のことなので今はやってないだろうと思いましたが、ネットで検索したら出てきました。私たちが訪れていたころのマスターは既に他界されていて、ご遺族が引き続き経営されている様子です。喫茶店のスタイルも当時のままで、懐かしくホームページを拝見いたしました。

さて、3年生の秋といえば、その後の進路を決め、進学するのなら勉学にいそしんでいなければなりません。私たちはそんなことを気にもせず、毎日遊びまわっていました。受験勉強に入ったのは、年が明けてからで、間に合うわけがありません。進路指導で担任から「どの大学を受けたいのか?」と聞かれ

国立大学を受けたいと申し出ると、「おまえが受かる大学はない」といわれる始末。偏差値は低いのに有名大学には入りたい、当然浪人です。写真の仲間3人とも同じ運命でした。

一年後3人で「夢」で会います。そこで進路の報告です。私は京都の大学、ほかの二人は東京とそれぞれの大学に進学することになりました。マスターからお祝いのコーヒーをいただいたのを覚えています。「にがいよ」と言って出されたコーヒーですが、甘くさえ感じた記憶があります。

あれから、「夢」には行っていません。3人で会うこともありません。でも、3人でさんざん遊んだ喫茶店が今でも営業しているのは、何ともありがたいことで、写真を見ながら、既に他界されたマスター、引き継がれたご遺族の方に深く感謝しました。

昔と変わらない雰囲気の店内です     http://www.dc-yume.jp/  「夢」さんのホームページです