VAN GQ シルクロード 

表題は私の高校生から大学生にかけてはやっていた洋服のブランドです。

VANは1948年に誕生し1950年代からアメリカンカルチャーを取り入れ日本にアメリカントラッドを浸透させた会社です。1960年代にはアイビールックを流行させ、私が高校生のころには猫も杓子もアイビールックの時代を作り上げます。VANの洋服はとても高くソックスが1200円、セーター安いものでも8000円、綿パン8000円、うろ覚えの値段ではありますが、とても高校生が手も出せるものではありませんでした。時代は長い学ラン、女の子は長いスカートがはやっていた頃で、VANの洋服を身につけているようなら、怖い不良の高校生にカツアゲされ脱がされてしまうこともあったようです。そんなVANに比べ安い製品を出していたのがGQで、VANの6割くらいの値段設定だったように覚えています。シルクロードも値段はVANと同じくらいでしたが、VANほどのトラッド一色ではありませんでした。

私が大学生になったころ、トラッドは勢いをなくしていきます。世はヨーロピアンファッションへと移っていきます。同時にトラッドも形を変え女性の間ではハマトラがはやってきます。女性向けファッション雑誌が横浜のお嬢様ファッションを取り上げて、これを「ヨコハマ・トラディショナル」略して「ハマトラ」と名づけて紹介したのが始まりです。1970年代後半からの「ハマトラ」の流行は元町を一挙に全国に知らしめています。ハマトラ三種の神器と呼ばれていたのが、「フクゾー洋品店」の洋服、「ミハマ」の靴、そして「キタムラ」のバッグです。これらは、ハマトラの定番ブランドとして流行しました。もちろん現在も元町にお店を構えています。

私のクローゼットには一枚の古びた半そでシャツがあります。ブランドはGQ。バラの柄です。これは私が20歳の時、京都の河原町で買ったものです。いい加減に処分したらという妻の声を無視して、捨てきれずにいるシャツです。ヨーロピアンファッションは、10センチのヒールのコンビの皮靴、ツータックの幅広スラックス、大きめのジャケット、VANの世界とは眞逆のファッションですが、やはり値段は高く、スラックスは12000円以上、シャツも8000円以上しました。中心的なブランドはたくさんありましたが、シルクロードはトラッドから形を変えヨーロピアンへと移っていました。ですが値段は高く私には手が出せません。そんな時代でもGQは比較的安い製品が多くありました。アルバイトが一日3000円、時給が450円くらいの時です。なかなかおしゃれはできませんでしたが、アルバイトを重ね、やっと買った洋服のひとつがこのシャツです。今はLサイズですが、このシャツはM。着ることはできません。

あらためて、このシャツを手に取ってみました。数十年たっている割には健在です。20歳の私はこれを着て京都の繁華街を闊歩していました。もう本当に遠い昔になりました。このシャツ、私が捨てることはないでしょう。たぶん息子か息子の嫁にでも、処分されると思います。それまでは大事にしてあげようと思います。