ねこ用缶詰
妻の実家は農家で、お付き合いが始まったころは、両親、祖父母、妹の6人家族、そしてねこが一緒に暮らしてました。白と黒の斑で、まだ子猫です。やんちゃな盛りで、いつも家の中を闊歩していました。今のように家猫が大事にされる時代でもありませんので、猫の食事は主に残飯です。そのせいか、やせ気味で小さい体でした。私は独身時代に、アパートにやってくる野良猫にあたえるために、キャットフードや猫用の魚の缶詰を持っていましたので、その小さな猫が不憫になり、あるとき猫用の缶詰を与えることにしました。缶詰を開けるや否やねこはにおいを察知して私のそばを離れません。一口食べさせました。そうすると普段ろくなものを食べていないせいか、ねこは興奮しだします。すぐに興奮は頂点に達し、家の中を全力で走りまわり始めました。その直後、勢い余って障子や板戸に激しく体当たりをし始めます。ねこの体あたりはやむことなく、何回も何回も激しい音とともに繰り返されました。それを見た祖母が「ねこになにをしたんだや~」と叫びます。妻が猫用の缶詰を与えたらこうなったと説明すると、祖母は「そんなに元気になるんだったらわしもくいて~!」とつぶやきました。それを聞いて、そこにいた家族全員で大笑いです。そんな笑い声の中、ねこは相変わらずいろんなところに全速力で体あたりを繰り返します。落ち着きを取り戻したのはだいぶ後のことでした。
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