男の約束

父は何でも口にしました。ゲテモノの類も得意で、蛇などは、戦時中はよく食べたようです。ですが、母はそのようなものが大嫌い、人が食べるものではないと思っていたようで、何かにつけ、いさかいの原因となっていました。何度目かのいさかいの後、母は、最後の手段、「実家に帰る」の一言で、父に蛇は食べないと約束をさせました。

小学校5年生の秋、私は物置で妙なものを見つけます。遠巻きに見るとロープの様で、天井からぶら下がっています。近づくと何だかすぐにわかりました。「蛇」です。長さは1メートル以上はあります。既に息絶えていて、頭には縄が結んであり、どうやら陰干しにしてあるようです。私は、すぐに母に報告します。母は「父ちゃんだよ・・・やだねぇ・・・」そういうと私に処分してこいと言い放ちました。私は気が進まず、「兄ちゃんに言ってくれ」と言います。兄はひとこと「わかった」と言って物置に向かいました。「捨ててきた」兄は確かに言いました。ですがこの一件、しばらくして兄の嘘であることが判明します。

1週間ほどしたある日、父の様子がおかしいのです。全身に赤い斑点ができて盛んにかゆみを訴えています。どうやら、何かのアレルギーのようです。母はそんな父を見て一言「へびたべたろ・・・」どうやら図星・・

あとで母から聞いた話では、兄の様子がおかしいので質したところ、どうやら、兄は捨てずに父に渡したらしく、それを父は別のところに隠したとのこと

隠した場所を教えろと母が食い下がっても、兄は「男の約束だから言えない」その一点張り。何かにつけ、父は長男の兄を頼りにしたようで、兄もその期待にこたえるべく、長男としての気概を持っていたようです。父が兄に向って「これは、男の約束だから、誰にも言うな」そう言ったのでしょう。父を最後までかばい、兄は男の約束を貫きましたが、あっさりと夫婦の約束を破った父には天罰が下ったようです。

クレヨンしんちゃん 男の約束