父と嫁その8
スバルレックス 父の乗ってた車
その日は、妻と息子は電車で水上に向かいました。駅に着くと父が迎えに来てくれています。
「ありがとうございます。迎えに来てもらって。」
「電車は混んでなかったか?」
「お父さん、車がピッカピカですね」
「昨日、一生懸命ワックスをかけたんだ。」
そういうと、ほめられたのがうれしかったらしく、やおら、タオルで磨き始め
「隅々までピッカピカだろう。特にガラスは丹念に磨いたんだ」
運転歴の長い妻は、ワックスをガラスにかけると油膜ができてしまい、夜など運転がしずらいことを知っています。
「お父さん、ガラスに塗ると光って見えなくなってしまいますよ・・・」
「だけど、雨はよくはじく!」
話はそこまでにして家に向かいます。しばらくして皆で墓参りに行くことになりました。
お墓に着くと、遠目からも我が家の墓石が妙に光っているのがわかります。何だろうと思いながらも水をかけます。かけた水はみんなはじかれ玉になって落ちていきます。
「水がみんなはじかれてしまいます」
「うん!昨日車のワックスでよく磨いたんだ!」
「車のワックスですか???・・・・」
とにかく、きれいにしたくてワックスをかけたようです。墓石に車のワックスがいいのか悪いのか・・・その時はわかりませんでしたが・・・
「お墓は屋外に置かれているので、こまめにお掃除をしていても、汚れたり痛んでいくことは避けられません。それでもできるだけ長く、きれいなお墓を維持したい人には、自分でワックスがけをするという手があります。ワックスは、墓石専用のものを使いましょう。ホームセンター、ネット通販、石材店等で販売しています。間違っても、床用や車用のワックスを使わないでください、かえって墓石を痛めてしまう原因になりかねません。」
と、ネットにありましたので、あまり良くなかったようです。
ただただ、車も墓石もしばらくピッカピカでした。父の思いは先祖に確かに届いたと思います。