駄菓子屋のいじわるばーさん

温泉街の通りを一本中に入った通りに駄菓子屋が2軒並んでいました。左手が「おまけや」右手が「いまいや」と言います。どちらも似たようなものを置いてあるのですが、「いまいや」のほうが子供受けするものが置いてあります。ご年配の方ならわかる「さぐり」や「くじ」プラモデルも置いてあります。私もそんなものにひかれ、頻繁に「いまいや」を訪れました。

ですが、この店のばーさん、意地が悪いのです。子供が商品を吟味していると「やたらさわるな」「買わないならかえってくれ」などなど・・・

子供心に傷つくことも多く「くそばばー!」などと心の中で叫ぶことも多々ありましたが、商品の魅力には勝てません、結局嫌な思いをしながらも通ってしまうのです。そんなある日、私は「いまいや」で、ある事件に出くわします。私が、お金を払ったのに、ばーさん、まだ貰ってないと言い張るのです。一緒に行った仲間も全員そろって「おかねは払った!」と抗議しても馬耳東風、「お金を払え」と言い続けます。半時ほどして、どうにも仕方がないので、仲間から借金して払い、放免となりました。家に帰り父にこのことを報告すると、「いまいやに行くぞ!ついてこい」そういうや否や私を引っ張っていくのです。ついてから父は淡々と事実を述べ、私の無罪を訴えます。言葉は少なく静かですが、表情は烈火のごとく怒りに満ち溢れているのがわかります。ですが、「いまいや」のばーさんも終始「金はもらってない」と言い張ります。しばらくのやり取りの後、とうとう父が強い口調で言い放ちました。「子供のおかげで商売してるんだろう!子供だと思ってなめたことしねー方がいいぞ!客がいなくなるぞ!」父の迫力に負け、ばーさん態度が急変・・「わ、わかりました、お金は返します。ぼく、ごめんね」・・・こんなばーさんみたことないし・・・「とーちゃん、すげぇー」

確かに私がお金を払っていたのは、仲間も見ていましたし、残金から見て間違いないのですが、このばーさん、すこし「ぼけ」が入っていたようです。また、生来の性格の悪さから子供には高圧的だったのですが、父のおかげで、それからほんのしばらくは優しいばーさんでした。しかし、次の日曜日にはもとの意地悪ばーさんに戻っていました。ほんとうに懲りたので、しばらくして、行くことはなくなりました。

雰囲気は同じです