父と嫁その7

水上町観光会館全景

抽選会

水上町には観光会館と言うコンベンションホールがあります。収容人は1000名ほど、小さなイベントホールです。長男が5歳の時のこと、そこでの記念イベントで抽選会がありました。水上町が主宰の抽選会で、ガラポンをまわす抽選会です。

実家に家族総出で出向いた時のこと、父がやけにニコニしています。

「久美子(仮名)くじ引きに行ってみるか?たくさん抽選券を持っているんだ」

なんでも、区長の役得で、割り当ての一人一枚のところ、100枚せしめたとのこと。満面の笑みで語りかけます。

長男は横で聞いていて

「僕もやりたい!!」

そんなこんなで皆で観光会館に出向きます。抽選会は入口のホールで行われていました。1等が電子レンジ、2等はトースター、3等がトレーナー

4等、5等とあって、参加賞が缶入りの「谷川岳の水」1本でした。

「ほら、みんなくじをやってみろ!」

そういって、妻と長男に一枚ずつ抽選権を渡します。運よく妻と長男は各々トレーナーを引き当てます。

それを見ていた父

「今度は、おじいさんだ!1等をあてるから見ていろ!」

意気ごんだものの

「残念!参加賞です」非情な係の人の声・・・

それからは、手にしていた抽選券が見る見るうちになくなっていきます。反比例して父の手元には「谷川岳の水」

無言でガラポンを廻す父

それを見つめる妻と長男

やがて、すべての抽選券がなくなります。父の手にしたものは98本の「谷川岳の水」

無言で立ち去ろうとする父に長男の一言

「おじいちゃん。僕にも券ちょうだい!」

時すでに遅し、長男の希望はかないません・・・